〈ミュージッキング〉の実践書であり、これからの〈音楽〉研究を志す人のための必読書!

音楽学者クリストファー・スモールが提唱した〈ミュージッキング〉。「音楽(ミュージック)」を固定された〈名詞〉ではなく、変化・生成する〈動詞〉として捉えること……行為として、実践として、変容するプロセスとして、そして何より人やモノ、出来事のネットワークとして音楽を理解することから何が見えてくるだろうか。そして、何が聴こえてくるのだろうか……

本書の扱っている領域は多岐にわたる。東日本大震災後の音楽の実践。サウンド・アートと名付けられる前の〈展示〉される音楽。レコードのライナーノーツ。デジタル音楽ファイルの歴史。ライブハウスのブッキングマネージャー。アニソンクラブイベント。日本のダブステップシーン。そしてグローバル化の中のインディー・ミュージック文化……本書を通じて、このような多種多様な場において〈音楽〉と名づけられた営為が単なる聴覚芸術文化にとどまらず、文化や社会、経済や政治のさまざまな実践を生み出していることを見ることができるだろう。

新進気鋭の研究者たち……この中には、ミュージシャンやDJ、音楽プロデューサー、パフォーマーなど実際に音楽の現場の実践にも深く関わっている人たちも含まれている……が、音楽学、ポピュラー音楽研究、社会学、メディア研究、文化研究を領域横断的に移動し、フィールドワーク、参与観察、聞き取り調査、そして詳細な文献研究を通じて、さまざまなミュージッキングの実践を描き出し、分析する。

これ自体ひとつの〈ミュージッキング〉の実践書であり、これからの〈音楽〉の研究を志す人のための必読書である。

 

東京藝術大学出版会 総頁数288頁
毛利嘉孝 編著 11月23日発売 定価(本体価格2,000円+税)

目次

はじめに―ミュージッキング後に向けて 毛利嘉孝

第Ⅰ部 越境する音楽

第1章 東日本大震災と「音楽の力」—音楽に何ができるのか? 中村美亜
第2章 日本サウンド・アート前史—1950年代から70年代に発表された音を用いた展示作品 北條知子

第Ⅱ部 遍在する音楽

第3章 日本盤ライナーノーツの文化史 髙橋聡太
第4章 「ネット文化」としてのMODの受容—1990年代における音楽ファイルフォーマットの伝送実践 日高良祐

第Ⅲ部 都市空間と音楽

第5章 東京ライブハウス文化の転換と再構築—中規模店舗のブッキングイベントを事例に 中野 哲
第6章 アニソンクラブイベントの集団性—SNS時代における〈界隈〉 浅野裕貴

第Ⅳ部 旅する音楽

第7章 日本におけるダブステップ—シーンとジャンルについて アルニ・クリスチャンソン
第8章 グローバル時代のインディー・ミュージック—アンダーグラウンド音楽文化のエスノグラフィーとアーティスト活動の実態 平松絹子